第2回では「実質2000円」がどこから出てくるのかを見てきました。今回はいよいよ、ご自身の数字を出す回です。ふるさと納税でいちばん最初に決めるべきは、返礼品でもサイトでもなく「自分はいくらまで寄付できるのか」。この記事では、限度額の意味、確認する3つの方法、手元に用意するもの、そして入力でつまずきやすいところまでを順に整理します。
限度額とは|自己負担2000円で収まる寄付の上限
ふるさと納税の「限度額」とは、寄付した額のうち2000円を超える部分が全額control控除される、その寄付額の上限のことです。控除上限額、全額控除される寄附額の上限、などとも呼ばれますが、指しているものは同じです。
ここを勘違いされている方が本当に多いのですが、限度額を超えて寄付しても、寄付そのものができなくなるわけではありません。超えた分は控除の対象から外れて、そのまま自己負担になるだけです。つまり自己負担が2000円ではなく、2000円+超過分になります。返礼品は受け取れますから「損」と決めつける必要はありませんが、実質2000円のつもりで始めた方にとっては、想定外の出費になります。
限度額は人によってまったく違います。第2回で見たとおり、控除される住民税には「所得割額のおよそ2割」という頭打ちがあり、その所得割額は年収・家族構成・社会保険料・各種控除で決まるからです。年収が同じでも、扶養家族がいるかどうか、医療費控除や住宅ローン控除を使っているかどうかで金額は動きます。だから「年収500万円ならいくら」という一律の答えは存在しません。
限度額はその年(1月1日〜12月31日)の所得で決まるため、寄付する時点では確定していません。

確認する方法は3つ
確認の方法は、手軽な順に3つあります。どれかひとつを選ぶというより、早見表でざっくり当たりをつけ、シミュレーターで絞り込むという二段構えが、いちばん迷いません。計算式は「なぜその金額になるのか」を納得したい方向けです。
早見表で当たりをつける
総務省のふるさと納税ポータルサイトには、給与収入と家族構成の組み合わせで「全額控除される寄附額の目安」を示した表が掲載されています。各ポータルサイトが載せている早見表も、基本的にこれをもとにしたものです。
| 給与収入(額面) | 独身または共働き | 夫婦(配偶者に収入なし) |
|---|---|---|
| 300万円 | 約28,000円 | 約19,000円 |
| 400万円 | 約42,000円 | 約33,000円 |
| 500万円 | 約61,000円 | 約49,000円 |
| 600万円 | 約77,000円 | 約69,000円 |
| 700万円 | 約108,000円 | 約86,000円 |
この表は社会保険料を標準的な水準と仮定した目安で、医療費控除や住宅ローン控除は考慮されていません。あくまで「だいたいこのあたり」を掴むためのものと考えてください。なお2025年度の税制改正で基礎控除と給与所得控除が引き上げられており、その影響で目安額がわずかに動く年収帯があります。最新の年収帯ごとの表と、共働き・扶養親族ありなど条件別の見方はふるさと納税の限度額早見表にまとめています。
シミュレーターに条件を入れる
早見表で当たりがついたら、次はシミュレーターです。楽天ふるさと納税をはじめ各ポータルサイトが用意しており、年収・家族構成・社会保険料などを入力すると、より自分の条件に近い金額が出ます。簡易版と詳細版が分かれているサイトが多く、詳細版のほうを使うことをおすすめします。簡易版は年収と家族構成だけで概算するため、早見表とほとんど変わらない精度だからです。
入力の手順と、どの欄に源泉徴収票のどの数字を入れればよいのかはふるさと納税シミュレーターの使い方で画面に沿って説明しています。
計算式で確かめる
3つめが、自分で計算する方法です。限度額の中心にあるのは住民税の「特例分」で、次の式で表されます。
限度額の目安 = 住民税所得割額 × 20% ÷(90% − 所得税率 × 1.021)+ 2,000円
所得税率は課税所得に応じて5%〜45%、1.021は復興特別所得税の分です。住民税所得割額は、前年分であれば毎年6月ごろに届く住民税決定通知書で確認できます。式そのものより「住民税所得割額の2割が土台になっている」という構造をつかんでおくと、なぜ年収だけでは決まらないのかが腑に落ちます。数字を当てはめる手順はふるさと納税の限度額を計算式で出す方法で追えます。
手元に用意するもの|源泉徴収票または給与明細
シミュレーターを使う前に、紙を一枚用意します。会社員の方なら、前年12月または1月に受け取った源泉徴収票です。見るのは主に3か所、「支払金額」「社会保険料等の金額」「源泉徴収税額」。このうち支払金額が年収にあたります。
源泉徴収票が見当たらない場合は、直近の給与明細でも代用できます。毎月の額面と、賞与の見込みを足して年間の収入を見積もる形です。厳密ではありませんが、限度額そのものが見積もりですから、この段階では十分です。給与明細に載っている健康保険・厚生年金・雇用保険の合計を12倍すれば、社会保険料のおおよその額も出ます。
年の途中で転職された方、産休・育休を取られた方は、その年の収入が前年と大きく変わります。前年の源泉徴収票をそのまま使わないでください。

入力でつまずきやすいところ
シミュレーターの結果が実態とずれる原因は、たいてい入力の側にあります。よくあるのが次の2つです。
額面と手取りを混同しない
シミュレーターの「年収」欄に入れるのは、手取りではなく額面(源泉徴収票の支払金額)です。ここを手取りで入れてしまうと、限度額が実際より少なく出ます。少なく出るぶんには寄付しすぎる心配はありませんが、本来使えたはずの枠を残すことになります。
逆に、額面を入れるべきところに「年収+各種手当の見込み」を多めに入れてしまう方もいます。支払金額には通勤手当などの非課税分は含まれませんので、源泉徴収票に書かれた数字をそのまま写すのが確実です。
どの年の収入を入れるのか
限度額は寄付する年の収入で決まります。2026年に寄付するなら、2026年1月から12月までの所得が基準です。ところが12月に寄付する時点でも、その年の年収は確定していません。だから多くの方は、前年の源泉徴収票を「今年もだいたい同じだろう」という仮定で使うことになります。
この仮定が崩れるのが、転職・退職・休職・大きな賞与の増減があった年です。収入が下がった年に前年の数字で寄付すると、限度額を超えてしまいます。
前年の源泉徴収票ではなく、今年の見込み年収を入力してください。
判断がつかないときは、10月〜11月の給与明細で年間の累計支給額を確認し、残りの月と賞与を足して見積もると精度が上がります。
結果が違って見えるとき
複数のサイトでシミュレーションすると、金額が微妙に食い違うことがあります。これは、どれかが間違っているわけではありません。社会保険料をどう仮定するか、住民税の均等割や調整控除をどこまで織り込むか、改正の反映時期はいつか。前提の置き方がサイトごとに違うので、結果にも幅が出ます。
数千円の差であれば、気にしすぎなくて大丈夫です。差が1万円以上開くようなら、入力した社会保険料の額が揃っていないことが多いので、そこを確認してみてください。どのサイトの結果を採用すべきかの考え方はふるさと納税シミュレーション、どれが正しい?で詳しく整理しています。
なお、住宅ローン控除や医療費控除を使っている方、株式の譲渡益や配当がある方、iDeCoに加入している方は、一般的なシミュレーターでは正確に出ません。控除で納める税金がすでに小さくなっている場合、限度額もその分小さくなります。該当する方は、詳細版のシミュレーターで該当欄まで埋めるか、お住まいの自治体の住民税窓口や税務署にご相談ください。
少なめに見積もるという考え方
限度額の話になると「ギリギリまで使い切りたい」という気持ちが出てきます。よく分かります。ただ私は、限度額の8割から9割で止めておくことをおすすめしています。
理由は単純で、限度額が確定するのは年が明けてからだからです。12月に想定外の賞与カットがあったり、逆に年末調整で控除が増えたりすれば、限度額は動きます。上振れしたときに取り戻せる金額はせいぜい数千円ぶんの返礼品ですが、下振れして超えたときは、超過分がまるごと自己負担になります。得られるものと失うものが釣り合っていません。
たとえば限度額が61,000円と出たなら、5万円前後で組み立てる。1万円の返礼品を5つ選べば、それで十分に「実質2000円で5つ届く」体験になります。
年末の駆け込みで枠を使い切ろうとすると、決済日のずれで翌年扱いになる事故も起きます。12月下旬の寄付はとくに注意してください。
限度額の計算は、突き詰めれば税理士の領域です。1円単位まで合わせようとして疲れてしまうくらいなら、早見表とシミュレーターでおおよその枠をつかんで、少なめに寄付する。ここまでで十分に、ふるさと納税の恩恵は受けられます。
まとめ|第4回はサイトと返礼品の選び方
今回は、自分の限度額を知る道筋を追いました。早見表で当たりをつけ、源泉徴収票を手元にシミュレーターへ入力し、額面と対象年度を間違えない。結果に幅が出ても数千円なら気にせず、8〜9割で止める。ここまでできれば、寄付する準備は整っています。
「実質2000円」の仕組みそのものをもう一度確認したい方は第2回・実質2000円の意味と控除のしくみへ戻ってみてください。次回の第4回では、ポータルサイトの選び方と返礼品の選び方に進みます。枠が決まったら、あとは何を選ぶかという楽しい段階です。
税制は改正されます。この記事は2026年8月現在の制度にもとづいて書いていますので、寄付の前に総務省のふるさと納税ポータルサイトで最新の内容をご確認ください。
