ふるさと納税の限度額は手取りと額面のどちらで計算する?答えは額面です

源泉徴収票と電卓を並べて年収を確認する様子

ふるさと納税のシミュレーターを開いて、最初の「年収」欄で手が止まる人はかなり多いはずです。振り込まれている金額を入れるのか、給与明細の総支給額を入れるのか。結論から言うと、入れるのは額面です。この記事では、額面と手取りのどちらを使うのかという判断だけでなく、手取りを入れてしまったときに限度額がどれくらいずれるのか、源泉徴収票のどこを見れば額面が分かるのか、賞与や交通費をどう扱うのかまでをまとめて整理します。

目次

計算に使うのは額面の年収

ふるさと納税の控除上限額(限度額)を計算するときに使うのは、社会保険料や税金が引かれる前の「額面」の年収です。手取りではありません。ポータルサイトのシミュレーターに「年収」「給与収入」と書かれている欄は、すべてこの額面を指しています。

理由は、限度額の計算そのものが税金の計算とまったく同じ道すじをたどるからです。総務省の説明によると、ふるさと納税の控除には所得税からの控除・住民税からの基本分・住民税からの特例分の3つがあり、限度額を実質的に決めているのは特例分の上限、つまり住民税所得割額の20%という枠です。そして住民税所得割は、額面の給与収入から給与所得控除を引き、さらに社会保険料控除や基礎控除などを引いた課税所得に対して計算されます。

ここが大事なところで、社会保険料は「手取りを減らす要素」であると同時に「税金の計算上、すでに控除として引かれている要素」でもあります。つまり額面を入力した時点で、シミュレーターの内部では社会保険料の分がきちんと差し引かれた計算が走っています。手取りを入れると、同じ社会保険料を二重に引くことになります。

シミュレーターの年収欄には、手取りではなく額面(総支給額)を入れる。これで社会保険料は自動的に考慮されます。

額面と手取りの違いをおさらいする

言葉の定義を先に揃えておきます。額面は会社が支払うことになっている総支給額で、基本給・残業代・各種手当・賞与を合計した金額です。手取りは、そこから健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税・住民税を引いたあとの、実際に口座へ入る金額を指します。

差し引かれる割合は年収や年齢、扶養の状況で変わりますが、一般的な会社員なら額面のおおむね75〜85%程度が手取りになります。年収が上がるほど税率が上がるので、この比率は下がっていきます。年収500万円の人なら、手取りは390万円前後というのが目安です。

額面(総支給額)
手取り(振込額)
  • 基本給・残業代・手当・賞与の合計
  • 源泉徴収票の「支払金額」に相当
  • ふるさと納税の限度額計算に使うのはこちら
  • 社会保険料と税金を引いたあとの金額
  • 給与明細の「差引支給額」
  • 限度額の計算には使わない

僕の場合、社会人1年目のころは「年収=振り込まれた合計」だと思い込んでいました。転職サイトの年収欄も、ふるさと納税のシミュレーターも、公的な統計の平均年収も、指しているのは額面です。ここを揃えておくだけで、限度額の話はほとんど迷わなくなります。

総支給額と差引支給額が並んだ給与明細のイメージ

手取りで入れると何が起きるか

間違えた場合にどうなるのかを、金額で見ておきます。損得の方向がケースによって逆になるので、両方おさえておきたいところです。

限度額が実際より小さく出る

圧倒的に多いのがこちらです。手取りは額面より小さいので、そのまま入力すれば当然、限度額も小さく計算されます。

総務省が公開している「全額控除されるふるさと納税額の目安」(2026年8月時点)では、給与収入500万円・独身または共働きの場合の上限はおよそ61,000円です。一方、同じ表で給与収入400万円・独身の場合はおよそ42,000円。年収500万円の人が手取りの390万円台を入力すると、この400万円の行に近い金額が返ってきます。

入力した金額目安として出る限度額
額面 500万円(正しい)約61,000円
手取り 約390万円(誤り)約42,000円前後
額面 300万円約28,000円

※独身または共働き(配偶者控除なし)で、住宅ローン控除や医療費控除などがない場合の目安です。

差はおよそ19,000円分の寄付枠。返礼品の還元率を3割として、6,000円分ほどの返礼品を取りこぼす計算です。控除できる枠を使い残しても罰則があるわけではありませんが、もったいないことに変わりはありません。

逆に大きく出てしまうケース

問題はこちらです。手取りだと思って入れた金額が、実は本当の額面より大きかった場合、限度額は過大に表示されます。よくあるのは次のような取り違えです。

ひとつは、共働き世帯で世帯合計の収入を入れてしまうパターン。ふるさと納税の限度額はあくまで寄付する本人の所得で決まります。夫婦それぞれが寄付するなら、それぞれの年収でそれぞれ計算し、クレジットカードの名義と寄付者名も本人で揃える必要があります。

もうひとつは、月々の手取りに賞与の額面を足して年収を組み立てるパターンや、額面ベースの月給を12倍したうえに前職の収入を重ねてしまうパターンです。転職した年は特にずれやすいところです。

【上限を超えるとどうなるか】

控除上限額を超えて寄付した分は、税金から差し引かれず自己負担になります。「2,000円の負担で返礼品がもらえる」という前提がその部分だけ崩れる形です。年末にまとめて寄付する人ほど、超過したことに気づくのが翌年6月の住民税決定通知書になりがちなので、限度額はぎりぎりを狙わず少し余裕を残すのが安全です。

シミュレーターの年収欄が指しているもの

各ポータルのかんたんシミュレーターは、入力欄が「年収」「給与収入」「収入(額面)」などサイトごとに表記が違います。言い回しは違っても、指しているのは源泉徴収票の支払金額と同じ額面です。手取りを入れる欄が用意されているシミュレーターは、執筆時点で主要ポータルには見当たりません。

かんたん版は、年収と家族構成だけで概算を出す作りになっています。社会保険料は年収から一定率で自動計算され、控除も基礎控除など標準的なものだけを想定しています。詳細版に切り替えると、社会保険料の実額・生命保険料控除・医療費控除・iDeCoの掛金などを自分で入力できるようになり、精度が上がります。

入力する前に、そのシミュレーターがかんたん版か詳細版かを確認しておきましょう。控除が多い人ほど、かんたん版の結果は実際より大きく出ます。

入力欄ごとの意味や、詳細版でどこまで埋めるべきかはシミュレーターの使い方をまとめた記事で手順に沿って解説しています。

源泉徴収票の支払金額欄を指し示すクローズアップ

源泉徴収票で額面を確かめる

いちばん確実なのは、源泉徴収票を見ることです。会社員なら年末調整のあと、12月から翌1月にかけて配られます。

見るべきなのは、いちばん左寄りにある「支払金額」の欄です。これがその年の額面年収そのもので、シミュレーターにはこの数字を入れます。すぐ隣に「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」「源泉徴収税額」が並んでいますが、これらは入力しません。特に「給与所得控除後の金額」は支払金額より小さく、手取りに近い見た目をしているので、間違えて入力しないよう注意してください。

ここで一点だけ、時期の問題があります。ふるさと納税の控除は、寄付した年の所得に対して計算されます。2026年に寄付するなら基準は2026年分の所得ですが、その年の源泉徴収票が手に入るのは12月以降です。つまり年内に寄付を決める時点では、前年の源泉徴収票を出発点にして、昇給や残業の増減、賞与の変動を織り込んで見積もることになります。収入が前年と大きく変わらない見込みなら前年の支払金額をそのまま使い、少し余裕を持たせた寄付額にしておくと外しにくいです。

源泉徴収票のどの欄がどの計算に効いてくるのかは源泉徴収票から限度額を読み解く記事で項目ごとに追いかけています。

賞与や手当は含めるのか

賞与(ボーナス)は含めます。賞与も課税対象の給与収入なので、額面年収の一部です。年収を月給の12倍で計算していると、賞与のある人は限度額を大きく取りこぼします。

残業代・住宅手当・役職手当・資格手当なども、給与として課税されるものはすべて含みます。要するに、源泉徴収票の支払金額に入っているものはすべて含む、と考えれば整理がつきます。

一方、通勤手当は原則として非課税で、支払金額には含まれません。公共交通機関の通勤手当は月15万円までが非課税枠なので、一般的な通勤圏なら全額が対象外です。給与明細の総支給額には通勤手当も並んでいるため、明細から年収を組み立てると通勤手当の分だけ額面が過大になります。これも、明細ではなく源泉徴収票を見るべき理由のひとつです。

副業の収入や、株式・不動産の所得がある場合は、給与とは別の枠で所得に加わります。この場合はかんたんシミュレーターでは足りず、詳細版で所得の種類ごとに入力する必要があります。

額面で入れても結果がずれるとき

正しく額面を入れたのに、サイトごとに違う金額が出た、あるいは実際の控除額と合わなかった。これも珍しくありません。原因はだいたい控除の側にあります。

住宅ローン控除を受けている人は、所得税がすでに大きく減っているぶん、ふるさと納税で差し引ける余地が小さくなります。特に確定申告で住宅ローン控除を受けている場合は影響が出やすく、かんたんシミュレーターの数字を鵜呑みにすると超過しかねません。医療費控除を申告した年、iDeCoの掛金が大きい年、生命保険料控除や扶養親族が増えた年も同じ方向に働きます。

逆に、ワンストップ特例と確定申告のどちらを使うかによっても控除の内訳が変わります。金額の総額はおおむね同じになりますが、住宅ローン控除と組み合わせた場合など、条件によっては差が出ます。

正直なところ、控除が多い年の限度額計算はかなり面倒です。僕は住宅ローン控除や医療費控除がからむ年は、限度額を1割ほど低く見積もって寄付するようにしています。数千円の枠を残す代わりに、超過のリスクをほぼ消せるからです。

シミュレーターごとの計算の違いと、どれを信じるべきかの判断はシミュレーター比較の記事で扱っています。

まとめ|入れるのは額面 迷ったら源泉徴収票を見る

ふるさと納税の限度額計算に使うのは、手取りではなく額面の年収です。社会保険料はシミュレーターの内部ですでに差し引かれているため、手取りを入れると二重に引いた計算になり、限度額が本来より1万円以上小さく出ることもあります

確かめ方はシンプルで、源泉徴収票の「支払金額」を見る。それだけです。賞与や各種手当は含まれ、通勤手当は含まれない。この数字をそのまま年収欄に入れれば、まず外しません。年内に寄付する時点では前年の支払金額を使い、収入の変動を見込んで少し控えめの金額で寄付する。この進め方が、超過も取りこぼしも避けやすい形です。

なお、住宅ローン控除や医療費控除、iDeCoなどがある人は、かんたん版ではなく詳細版のシミュレーターを使ってください。

手取りで計算してしまい、限度額より少なく寄付しました。追加で寄付できますか?

同じ年の12月31日までであれば追加で寄付できます。控除の対象は、その年の1月1日から12月31日までに決済が完了した寄付です。ただしワンストップ特例を使う場合は、寄付先が5自治体以内であること、申請書の提出期限が翌年1月10日必着であることの2点に注意してください。

年収がいくらなら限度額はいくらか、はっきり知りたいです。

家族構成・社会保険料の実額・他の控除の有無で変わるため、金額を一律に言い切ることはできません。目安としては総務省が公開している早見表があり、より自分に近い数字が欲しい場合は各ポータルの詳細シミュレーターに源泉徴収票の数字を入力するのが確実です。

収入が少ない場合でもふるさと納税はやるべきですか?

納める住民税・所得税が少ない、あるいは非課税の人は控除できる枠がほとんどなく、寄付額のほとんどが自己負担になります。産休・育休で収入が大きく下がった年や、退職して収入がない年も同じです。この場合は無理に寄付せず、収入が戻った年に回すほうが得です。

税制度の詳細は総務省のふるさと納税ポータルサイトで最新の内容を確認してください(本記事は2026年8月時点の制度に基づいています)。

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