年金受給者のふるさと納税|できるかどうかと限度額の考え方

年金の通知書と電卓、老眼鏡が並んだ机の上の様子

結論から言うと、年金を受け取っていてもふるさと納税はできます。ただし全員に効果があるわけではなく、分かれ目は年齢でも職業でもなく「住民税を納めているかどうか」です。この記事では、その境目になる年金額の目安、年金収入別の限度額イメージ、公的年金と個人年金の扱いの違い、そして手続きをどちらで進めるかまでを順番に整理します。

目次

年金を受け取っていてもふるさと納税はできる

ふるさと納税の制度には、年齢や職業の条件はありません。寄付できるのは「税金を納めている人」であって、その収入が給与なのか年金なのかは問われないからです。年金生活に入ったからといって申し込みを断られることはありませんし、返礼品を受け取れる点も会社員のときと変わりません。

変わるのは、控除できる金額の計算に使う数字です。会社員なら給与収入と給与所得控除で所得が決まりますが、年金受給者は公的年金等控除を引いた後の金額が土台になります。この控除がかなり大きいため、同じ「収入◯万円」でも、年金受給者は会社員より限度額が小さくなるのが基本の形です。

そしてもう一つ、年金受給者ならではの前提があります。控除の土台になる税金そのものが発生していないケースが、会社員より格段に多いということです。ここを確かめずに寄付すると、返礼品は届くけれど税金は1円も減らない、という結果になります。

住民税の納税通知書で所得割額の欄を確認する場面

分かれ目は住民税を納めているかどうか

ふるさと納税は「寄付」という名前ですが、中身は納める予定の税金の前払いに近い仕組みです。寄付した金額から2,000円を引いた分が、所得税の還付と翌年度の住民税の減額という形で戻ってきます。そして戻り分の大部分を負担しているのは住民税のほうです。

所得税がゼロでも、住民税の所得割を納めていれば、ふるさと納税の効果は残ります。

逆に、住民税が課税されていない人にはそもそも減らす税金がありません。この場合、支払った寄付金は全額が純粋な持ち出しになります。返礼品の価値は寄付額の3割以内と決められているので、金額だけを見れば確実にマイナスです。だからこそ、年金受給者の場合は限度額の計算より先に「自分に住民税がかかっているか」を確かめる順番になります。

公的年金等控除で課税所得が小さくなる

公的年金等控除は、年金収入から差し引ける控除です。65歳以上で公的年金等の収入が330万円未満なら110万円、65歳未満なら最低60万円が引かれます(国税庁)。ここに基礎控除や社会保険料控除が重なるため、年金だけで暮らしている場合は課税所得がかなり小さくなります。

さらに2025年度(令和7年度)の税制改正で、所得税の基礎控除が引き上げられました。合計所得金額132万円以下の人は95万円、132万円超336万円以下の人は令和7年分・令和8年分に限って88万円が適用されます。この結果、65歳以上で公的年金以外に収入がない場合、公的年金収入がおよそ205万円までは所得税がかからない計算になります(110万円+95万円)。社会保険料控除などを加えれば、実際の非課税ラインはもう少し上がります。

一方で、住民税の基礎控除は43万円のまま据え置きです。所得税だけが手厚くなった形なので、「所得税は0円だが住民税は納めている」という区間が以前より広がりました。この区間にいる人は、住民税の減額だけを使ってふるさと納税をすることになります。

非課税であれば控除は受けられない

住民税が非課税になるラインは、住んでいる自治体と家族構成で変わります。よく目安として使われるのが、65歳以上・単身の場合の年金収入155万円です。多くの自治体で均等割の非課税限度は合計所得45万円とされており、これに公的年金等控除110万円を足した金額にあたります。65歳未満なら公的年金等控除が60万円になるため、目安は105万円あたりまで下がります。

ただしこの45万円という基準は級地区分によって異なり、扶養している家族がいる場合は「35万円×人数+31万円」といった別の式になります。夫婦二人世帯で年金収入211万円あたりが境目になる、と言われるのはこの計算によるものです。自分がどちらなのかは、お住まいの自治体の税務担当課の案内で確認できます。

寄付する前に確かめること

去年の住民税の納税通知書(または特別徴収税額の決定通知書)を用意して、「所得割額」の欄を見てください。ここが0円なら、ふるさと納税をしても減らせる税金はありません。

遺族年金と障害年金は、そもそも所得税・住民税ともに非課税です。これらだけを受け取っている場合、金額の大小にかかわらず限度額は生まれません。ここは勘違いしやすいので、老齢年金と分けて考えてください。

目安はどのくらいか

住民税を納めているとわかったら、次は金額の見当をつけます。参考として、65歳以上・単身・公的年金以外の収入なし・社会保険料は年金収入の1割程度、という前提で概算したものが次の表です。あくまで条件を固定した計算例で、実際の金額とは差が出ます。

年金収入(年額)住民税の所得割限度額の概算
155万円以下非課税効果なし
180万円1万円前後4,000円前後
200万円3万円前後8,000円前後
250万円7万円前後1万9,000円前後
300万円12万円前後2万9,000円前後

表を見ると、年金収入200万円で1万円弱、300万円でようやく3万円前後という水準です。会社員時代に3万円、5万円と寄付していた人ほど、思ったより小さいと感じるはずです。限度額を超えた分は自己負担になるので、この段差は必ず意識してください。

さらに、医療費控除や生命保険料控除を使う年は課税所得が下がり、限度額も一緒に下がります。高齢になるほど医療費控除を使う機会は増えるので、両方を予定している年は寄付額を少なめに見積もっておくほうが安全です。この関係はふるさと納税と医療費控除の併用で詳しく整理しています。

公的年金と個人年金で違うところ

「年金」とひとくくりにされがちですが、税金の計算では扱いが分かれます。公的年金等控除の対象になるのは、国民年金・厚生年金といった公的年金のほか、企業年金や確定拠出年金を年金形式で受け取るものです。これらは合算して控除額が決まります。

これに対して、保険会社と契約した個人年金は公的年金等控除の対象外です。受け取った金額から、その年に対応する払込保険料を差し引いた残りが雑所得になります。受け取り時に10.21%が源泉徴収される点も公的年金とは別の扱いです。

限度額の観点でいうと、個人年金の受取額は「まるごと所得に乗る」わけではなく、差額部分だけが所得に加わります。公的年金と同じ感覚で足し算すると限度額を多く見積もってしまうので、契約先から届く支払明細の必要経費欄を見て、実際の雑所得の額を確認してください。

働きながら年金を受け取っている場合

再雇用や嘱託で働きながら年金を受け取っている人は、給与所得と公的年金等の雑所得の両方を持つことになります。この場合、給与所得控除と公的年金等控除の二重取りを調整するために、所得金額調整控除という仕組みが入ります。給与所得と年金所得の合計が10万円を超えるとき、最大10万円が所得から差し引かれるものです。

限度額としては、年金だけの人よりまとまった金額になることが多い区分です。給与収入が加わるぶん課税所得が増え、所得税率も上がりやすいためです。ただし勤め先の年末調整ではふるさと納税の手続きは完結しません。給与があってもワンストップ特例か確定申告のどちらかは必要です。

もう一点、在職老齢年金で年金の一部または全部が支給停止になっている場合、停止されている分は受け取っていないので所得にも入りません。ねんきん定期便の「本来の年金額」ではなく、実際に振り込まれた金額で計算してください。僕も最初は満額のつもりで表を見ていて、ここで数字がずれました。

ワンストップ特例の申請書に記入している手元

手続きはどちらを使うか

年金受給者には、公的年金等の収入金額が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告が不要になる制度があります。ここに当てはまる人は、確定申告をせずワンストップ特例で完結させるのが手数として軽い選択です。

ワンストップ特例
確定申告
  • 申請書と本人確認書類を寄付先に郵送するだけ
  • 寄付先が5自治体以内であること
  • 翌年1月10日必着(期限を過ぎると無効)
  • 6自治体以上に寄付した人はこちら
  • 医療費控除を使う年もこちら
  • 寄付金受領証明書か年間寄付額の証明書が必要

気をつけたいのは、ワンストップの申請書を出した後で確定申告をすると、その申請が全部無効になることです。医療費がかさんで年明けに確定申告することにした、という流れは高齢の方ほど起こりやすいので、その場合は寄付分もまとめて申告書に書き直してください。書き忘れると寄付だけが宙に浮きます。正直、この二度手間はなかなか面倒でした。

申請書の書き方やマイナンバーカードを使ったオンライン申請の手順はワンストップ特例の申請ガイドにまとめてあります。

自分の条件で確かめる

ここまでの目安はあくまで概算です。実際の限度額は社会保険料や各種控除で動くので、最後は自分の数字で確かめます。手順は3つだけです。

STEP
住民税の通知書で所得割額を見る

毎年6月ごろに届く納税通知書を開き、市民税と県民税の所得割額を確認します。ここが0円なら寄付は見送りが正解です。

STEP
公式シミュレーターに年金額を入れる

総務省のふるさと納税ポータルサイトや各ポータルの詳細シミュレーターに、年金収入・社会保険料・家族構成を入力します。給与欄しかない簡易版ではなく、年金収入の入力欄がある詳細版を使ってください。

STEP
出た金額から少し引いて寄付額を決める

医療費控除や年の途中の収入変動で限度額は下がることがあります。出た金額の8割程度にとどめておくと、超過分の自己負担を避けやすくなります。

シミュレーターの入力欄でどこに何を入れるかはシミュレーターの使い方で画面ごとに説明しています。判断に迷う控除がある場合は、お住まいの市区町村の税務担当課に聞くのが確実です。

寄付そのものの期限は12月31日の決済完了まで、ワンストップの申請書は翌年1月10日必着です。年金の振込は偶数月なので、12月の入金を見てから動くと期限まで日数がありません。11月中には寄付額を決めておくくらいの余裕を見てください。

まとめ|納めている住民税があるかを先に確かめる

年金受給者でもふるさと納税はできます。ただし判断の順番は会社員と逆で、返礼品を選ぶ前に住民税の所得割額を見るところから始めます。65歳以上・単身なら年金収入155万円あたりが非課税かどうかの目安で、ここを下回る人は寄付をしても税金は減りません。

住民税を納めている人でも、限度額は年金収入200万円で1万円弱、300万円で3万円前後という規模感です。この範囲で選べる返礼品は十分にありますから、金額を無理に伸ばさず、日常的に使う米や日用品にあてるほうが満足度は高くなります。

制度の内容は2026年8月時点のもので、所得税は令和7年分以後の基礎控除の見直しが反映された状態です。控除額や非課税限度額は改正で変わることがあるため、寄付する年の最新の取り扱いは国税庁のふるさと納税(寄附金控除)のページとお住まいの自治体の案内で確認してください。

年金以外に収入がなくても限度額はありますか。

住民税の所得割が課税されていれば限度額は生まれます。65歳以上・単身なら年金収入155万円が非課税かどうかの目安で、これを上回っていれば数千円から数万円の範囲で寄付できます。

遺族年金や障害年金しか受け取っていない場合はどうなりますか。

これらは所得税・住民税ともに非課税で、所得として計算されません。他に課税される収入がなければ住民税もかからないため、寄付しても控除は受けられません。

70歳や80歳になると条件は変わりますか。

ふるさと納税の制度に年齢の上限はなく、65歳以上であれば公的年金等控除の扱いも同じです。年齢よりも、その年の年金額と控除の内容で限度額が決まります。

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収入がまったくない年や、扶養に入っている場合の考え方は無収入・扶養内のふるさと納税で整理しています。判断の軸は今回と同じで、納めている税金があるかどうかです。

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