結論から言うと、その年の収入がまったくない場合、ふるさと納税をしても控除は受けられません。制度そのものが「納める税金を先に別の自治体へ回す」仕組みなので、納める税金がなければ差し引く先がないからです。この記事では、なぜ控除が発生しないのか、それでも寄付する意味があるのか、年の途中まで働いていた場合や世帯で考える場合はどうするか、そして翌年に収入が戻ったときの進め方までを順番に整理します。
収入がない年は控除を受けられない
ふるさと納税の「実質2,000円」は、寄付した金額のうち2,000円を超える部分が、その年の所得税から還付され、翌年度の住民税から差し引かれることで成り立っています。つまり控除の受け皿になるのは、所得税と住民税という2つの税金だけです。
1年を通して収入がなければ、その年の所得税は発生しません。そして翌年度の住民税も、所得がないので所得割がかかりません。受け皿が両方ともゼロの状態です。この年に寄付をしても、差し引かれるものが存在しないため、控除額は計算上ゼロになります。
ふるさと納税の限度額は「収入の大きさ」ではなく「その年に納める所得税・住民税の大きさ」で決まります。
ここでよく混乱が起きるのが、「今年も住民税を払っているのに、なぜ控除されないのか」という点です。住民税は前年の所得に対して課税され、翌年6月から徴収されます。今年無職でも、去年働いていれば今年の住民税は納めています。ただしその住民税は「去年の所得に対する税金」で、すでに金額が確定しているものです。今年の寄付が効くのは、あくまで今年の所得税と、来年度の住民税。今払っている住民税が減るわけではありません。
なぜ受けられないのか|差し引く税金がないから
もう少し具体的に見ていきます。ふるさと納税の控除は、大きく3つの部分に分かれています。所得税からの控除、住民税の基本分からの控除、そして住民税の特例分からの控除です。3つを合計して、寄付額から2,000円を引いた金額になるように設計されています。
このうち住民税の特例分は、住民税の所得割額を基準に上限が決まります。所得割がゼロなら特例分もゼロ。基本分も同じく差し引く税額がなく、所得税も発生していないので還付するものがありません。3つとも成立しないので、寄付額のすべてが自分の持ち出しになります。
この「所得割がかかっているかどうか」が分かれ目である点は、パートや年金受給者の場合とまったく同じ考え方です。収入の種類や働き方ではなく、税金を納めているかどうかで判断します。
なお、失業給付(雇用保険の基本手当)や、健康保険の傷病手当金は非課税の扱いです。受け取っていても課税所得にはならないため、ふるさと納税の限度額を生み出すことはありません。この点は誤解しやすいので、収入があるように見えても限度額としてはカウントしない、と覚えておくとよいです。

それでも寄付する意味はあるか
控除が受けられない年でも、寄付そのものを止められるわけではありません。制度上どう扱われるのかを、できること・できないことに分けて確認します。
寄付そのものはできる
ふるさと納税は自治体への寄付です。所得や職業の条件はなく、誰でも申し込めます。ポータルサイトの申し込み画面で年収や職業を審査されることもありません。返礼品も、条件を満たしていれば通常どおり届きます。
唯一のはっきりした制限は、自分が住んでいる自治体へ寄付した場合は返礼品を受け取れない、というルールくらいです。応援したい自治体がある、災害支援として寄付したい、というときに手段として使えるのは変わりません。
全額が自己負担になる
一方で、控除がゼロである以上、寄付した金額はまるごと支出です。数字にすると分かりやすいので、30,000円寄付した場合で並べてみます。
| 項目 | 納税している年 | 収入がない年 |
|---|---|---|
| 寄付額 | 30,000円 | 30,000円 |
| 控除される額 | 28,000円 | 0円 |
| 自己負担 | 2,000円 | 30,000円 |
| 返礼品の目安 | 9,000円相当 | 9,000円相当 |
※限度額の範囲内で寄付した場合の考え方です。返礼品は調達費が寄付額の3割以内と定められているため、9,000円相当を目安としています。
30,000円を払って9,000円相当の品を受け取る買い物になります。損得だけで言えば成立しません。僕はこの表を作ってみて、あらためて「控除があるから成立している制度」なのだと確認しました。
ポイント目当てで回収する、という考え方も今は使えません。2024年6月の総務省告示の改正により、2025年10月からポータルサイトによるポイント付与そのものが禁止されています(クレジットカード決済で付く通常のポイントは対象外)。ポイントで自己負担分を埋める前提は、現在は成り立たないと考えてください。
控除が受けられない年の寄付は、返礼品の割引ではなく純粋な支出です。生活費を削ってまで行う場面ではありません。
年の途中まで収入があった場合
ここが一番判断の分かれるところです。「今は無職だが、今年の3月までは働いていた」という場合、その年の1月1日から12月31日までに受け取った給与は課税対象として残っています。源泉徴収票が手元にあるはずで、そこに書かれた支払金額が限度額の元になります。
つまり、年の途中で退職した年は、働いた月数のぶんだけ限度額があるということです。金額は小さくなりますが、ゼロではありません。1月〜3月の給与が90万円だったなら、その90万円を年収として公式シミュレーターに入力すれば、その年の目安が出ます。
最後の給与明細か源泉徴収票で、その年に受け取った給与の合計額を確認する
退職後に再就職していれば、その分の給与も合算する
失業給付は含めない(非課税のため)
ただし退職金の扱いや、年末調整が済んでいないことによる確定申告の必要性など、退職した年には固有の論点がいくつかあります。詳しくは退職した年のふるさと納税|退職金は限度額に入るのかで整理しているので、年の途中で辞めた方はそちらを先に読んでください。
退職して年末調整を受けていない場合、ワンストップ特例ではなく確定申告での手続きになるケースが多くなります。

世帯としてどうするか|収入がある人の名義で寄付する
自分に収入がなくても、配偶者や家族に収入があるなら、世帯として返礼品を受け取る方法はあります。答えはシンプルで、収入があって税金を納めている人の名義で寄付することです。
ふるさと納税の控除は、寄付を行った本人にしか適用されません。名義が違えば、たとえ同じ家に住んでいて家計が一つでも、控除は通りません。専業主婦・専業主夫の方が自分の名義で申し込んでも全額自己負担になってしまうので、ここは間違えないようにしたいところです。
申し込み時に押さえるのは、寄付者の氏名・住所を控除を受ける人のものにすること、そして支払いに使うクレジットカードの名義も同じ人に揃えることの2点です。カード名義が別人だと自治体側で寄付者を確認できず、受付をやり直しになることがあります。僕は最初これを軽く見ていて、確認の連絡が来たことがありました。名義まわりの詳しい注意点はふるさと納税の名義|寄付者と支払い方法の合わせ方にまとめています。
返礼品の送り先は、寄付者の住所と別にできる自治体も多くあります。名義は収入がある人、届け先は自宅、という形にすれば世帯として無理なく使えます。
翌年に収入が戻ったら
再就職して収入が戻った年からは、通常どおりふるさと納税ができます。判断の基準は前年ではなく、その年の1月1日から12月31日までに受け取る収入です。前年が無職だったことは限度額に影響しません。
注意したいのは、年の途中から働き始めた年は、翌年以降のフルに働いた年より収入が少ないぶん、限度額も小さくなる点です。「去年と同じ感覚で」ではなく、その年の見込み年収であらためて計算し直します。転職や再就職の年は月々の給与が変動しやすいので、12月の給与が確定してから最後の寄付を決めると、限度額を超えるリスクを抑えられます。
逆のパターン、つまり「寄付した年は働いていたが、翌年に無職になった」場合はどうなるか。この場合は控除が受けられます。翌年度の住民税は前年(働いていた年)の所得に対して課税されるので、無職になっていても住民税自体は発生しており、そこから寄付分が差し引かれるからです。年の途中で退職して収入がなくなった状態で住民税の納付書が届くと不安になりますが、ふるさと納税の分はきちんと反映されています。6月ごろに届く住民税決定通知書の「税額控除額」の欄で確認できます。
1月から12月までに受け取った(受け取る見込みの)給与を合計します。無職期間中の失業給付は含めません。
総務省のふるさと納税ポータルサイトや各ポータルの詳細シミュレーターに、その年の収入と家族構成、社会保険料などを入力して目安額を出します。
収入の見込みがぶれやすい年は、出た目安額をそのまま使わず少し余裕を残します。超えた分は控除されず自己負担になるためです。
確定申告が必要な事情がなく、寄付先が5自治体以内ならワンストップ特例。年の途中で退職して年末調整を受けていないなら確定申告を選びます。
まとめ|納める税金がある年にあらためて考える
収入がない年のふるさと納税は、結論としてやる価値がありません。控除の受け皿になる所得税と住民税がないため、寄付額の全額が自己負担になり、手元に残るのは寄付額の3割以内の返礼品だけだからです。応援したい自治体があるなら寄付そのものは自由にできますが、それは節税ではなく純粋な寄付として判断することになります。
一方で、年の途中まで働いていた年には限度額が残っています。小さくても使えるので、源泉徴収票を確認したうえで見積もる価値があります。世帯で返礼品を受け取りたいなら、収入がある人の名義に揃えるのが唯一の正解です。そして再就職した年からは、その年の収入で計算し直して再開すればよいだけです。
寄付の申し込み自体は年末ぎりぎりまでできますが、12月末は決済の締め切りが自治体ごとに前倒しになります。再開する年は、11月中に限度額を確定させて12月上旬までに寄付を終える段取りにしておくと、慌てずに済みます。
控除額や税額の具体的な判定は個々の状況によって変わります。制度の内容は2026年8月時点の情報をもとにしています。自分のケースで迷ったら、総務省のふるさと納税ポータルサイトや、お住まいの自治体の住民税窓口で確認してください。
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年金を受け取りながらふるさと納税を検討している場合は、年金受給者のふるさと納税|できるかどうかと限度額の考え方を参照してください。判断の分かれ目は年齢ではなく、住民税を納めているかどうかという点で、この記事と同じ考え方が使えます。
収入が戻って寄付を再開するときは、ふるさと納税の限度額早見表|年収と家族構成で見る目安が出発点になります。早見表でおおよその位置を掴んでから、公式シミュレーターで自分の数字を入れる流れが確実です。
