ふるさと納税と医療費控除の併用|両方使えるが限度額は下がる

確定申告書と医療費の領収書の束が並んだ様子

結論から書きます。ふるさと納税と医療費控除は、同じ年に両方申告できます。どちらかを諦める必要はありません。ただし医療費控除を使うとふるさと納税の限度額は下がるので、寄付する前に限度額を計算し直しておく必要があります。この記事では、下がる理由と下がり幅の目安、確定申告への手続きの一本化、そして必要な書類までを順番に整理します。

目次

医療費控除とふるさと納税は併用できる

まず前提から。ふるさと納税は税金の計算上「寄附金控除」、医療費控除は「医療費控除」という、それぞれ別の所得控除です。片方を使うともう片方が使えなくなる、という排他的な関係ではありません。同じ年の確定申告書に、両方を並べて書けます。

「どちらか選ばないといけないのでは」という不安が生まれるのは、住宅ローン控除やセルフメディケーション税制の話と混ざっているからだと思います。セルフメディケーション税制(対象の市販薬の購入額をもとに計算する制度)は医療費控除との選択制で、どちらか一方しか使えません。しかしふるさと納税は、そのどちらとも並行して使えます。

併用できるかどうかで悩む必要はありません。論点は「併用したときに限度額がいくら下がるか」だけです。

限度額を計算する電卓とメモ書き

併用すると限度額は下がる

ここが併用のいちばん大事なところです。医療費控除を受ける年は、ふるさと納税の実質2,000円で済む上限額(控除限度額)が下がります。医療費控除を使わない前提でシミュレーションした金額のまま寄付すると、超過分が自己負担になります。

医療費控除で課税所得が減るから

仕組みはシンプルです。医療費控除は所得控除なので、適用すると課税所得が減ります。課税所得が減れば住民税の所得割額が減り、所得税も減ります。

ふるさと納税の限度額は、この住民税所得割額を土台に決まります。具体的には、寄付額のうち住民税から特例的に控除される部分の上限が「住民税所得割額の20%」と決められているためです。土台になる税額が小さくなれば、限度額もそのぶん小さくなります。医療費がかさんだ年ほど、寄付できる枠は狭くなるという関係です。

なお、医療費控除の金額自体は「その年に支払った医療費 − 保険金などで補てんされた金額 − 10万円」で計算します(その年の総所得金額等が200万円未満の人は10万円ではなく総所得金額等の5%)。年間の医療費が10万円を超えていなければ、そもそも医療費控除は発生せず、限度額への影響もありません。

どのくらい下がるのかの考えかた

気になるのは金額感だと思います。ざっくりした感覚をつかむための目安として、限度額の下がり幅は「医療費控除額の2.5〜4%程度」と考えると外しにくいです。所得税率が高い人ほど割合は大きくなります。

下の表は、限度額の計算式(住民税所得割の20%を、所得税率と復興特別所得税を織り込んだ係数で割り戻す形)から逆算した概算です。医療費控除額が20万円だった場合の下がり幅も添えました。

所得税率医療費控除額に対する下がり幅医療費控除20万円のとき
5%約2.4%約4,700円
10%約2.5%約5,000円
20%約2.9%約5,700円
23%約3.0%約6,000円
33%約3.6%約7,100円

医療費が30万円かかって医療費控除額が20万円になった年でも、限度額の目減りは数千円という水準です。「医療費控除を使うと限度額が半分になる」というような大きな話ではありません。

ただし、これはあくまで概算です。社会保険料や扶養、住宅ローン控除の有無で結果は変わりますし、限度額ぎりぎりを狙う人ほど誤差が効いてきます。実際の金額は、医療費控除の見込み額を入力できるポータルサイトの詳細シミュレーターか、お住まいの自治体・税務署の公式な計算で確認してください。

シミュレーターの入力欄に「医療費控除」の項目があるかを見て、簡易版ではなく詳細版を使いましょう。

どちらを優先すべきかという問い

「医療費控除とふるさと納税、どっちを優先すべきか」はよく検索されている質問ですが、この問いは前提が少しずれています。両方申告できる以上、選ぶ場面がないからです。

性質もまったく違います。医療費控除は、支払った医療費に応じて税金が戻る(または減る)だけの制度で、追加の出費はありません。使えるなら使ったほうが手取りは増えます。一方でふるさと納税は、先に寄付というお金の支出があって、その後に税金が控除され、返礼品が手元に残る仕組みです。得をするかどうかは限度額の中に収まっているかどうかで決まります。

つまり優先順位を考えるのではなく、医療費控除を先に見込んでから、狭くなった限度額の中でふるさと納税の寄付額を決めるというのが正しい順番です。実際、僕は医療費が10万円を超えそうな年は、11月の時点で医療費のレシートを集計してから寄付額を決めています。

ちなみに、ふるさと納税を「やらないほうがよい」ケースもあります。医療費控除や住宅ローン控除を適用した結果、その年の所得税・住民税がほとんど発生しない状態になる人です。控除される税金がなければ、寄付はただの支出になります。産休・育休で年間の収入が少なかった年も同じ理由で注意が必要です。

順番はない|同じ年に両方申告する

手続き上の順番についても補足しておきます。「医療費控除を先に申告してから、あとでふるさと納税を申告する」という段取りは存在しません。1年分の所得と控除をまとめて1枚の確定申告書に書くので、同じ申告書の中で同時に処理されるのが正解です。

対象になるのは、その年の1月1日から12月31日までに「支払った」医療費と、同じ期間に「寄付した」ふるさと納税です。12月31日をまたぐと別の年の申告になります。年末に駆け込みで寄付するときは、決済が年内に完了しているかどうかで年度が変わる点だけ気をつけてください。

申告のタイミングは、原則として翌年の2月16日から3月15日まで。ただし、還付を受けるだけの申告(還付申告)は翌年1月1日から提出できます。会社員で医療費控除とふるさと納税を申告するだけなら、2月を待たずに1月中に出せることが多いです。混雑する時期を避けられるので、僕は毎年1月中に済ませています。

e-Taxの申告画面を開いたスマホとマイナンバーカード

手続きは確定申告にまとまる

医療費控除は、年末調整では処理できません。会社員でも自分で確定申告をする必要があります。そしてふるさと納税の分も、同じ申告書に寄附金控除として書きます。

流れとしてはこうなります。

STEP
医療費を集計する

1年分の領収書・レシートを、家族分もまとめて人別・病院別に集計します。健康保険組合から届く「医療費のお知らせ」を使うと入力を省ける場合があります。

STEP
寄付の証明書をそろえる

自治体から届く寄附金受領証明書、またはポータルサイトが発行する年間寄附額の証明書(XMLファイル)を用意します。

STEP
確定申告書を作成する

国税庁の確定申告書等作成コーナーで、医療費控除の明細書と寄附金控除を入力します。源泉徴収票の内容も転記します。

STEP
e-Taxまたは郵送で提出する

マイナンバーカードとスマホがあれば、そのままe-Taxで送信できます。還付金の振込先口座もここで指定します。

正直、医療費の集計だけは面倒でした。逆にいえば面倒なのはそこだけで、寄付の入力自体は証明書を見ながら数分で終わります。確定申告そのものの手順はふるさと納税の確定申告のやり方で画面つきで解説しているので、あわせて見てください。

ワンストップを出していた場合

ここがいちばん事故の多いところです。

ワンストップ特例は確定申告をすると無効になります

医療費控除のために確定申告をすると、提出済みのワンストップ特例申請はすべて無効になります。ふるさと納税の分も忘れずに確定申告書へ書いてください。書き漏らすと、寄付金がまるごと控除されないまま終わります。

申請済みだから大丈夫、と思い込んだまま医療費控除だけ申告するのが最も多い失敗です。

すでにワンストップ特例申請書を提出していても、自治体に取り下げの連絡をする必要はありません。確定申告の内容が優先されるので、寄付先すべてを申告書に記載すれば正しく処理されます。詳しくはワンストップと確定申告が重なったときの扱いにまとめています。

なお、年の途中で「医療費が10万円を超えそうだ」と分かった時点で、その年のワンストップ申請はもう出さなくて構いません。どうせ確定申告に一本化されるからです。

必要な書類

併用のときにそろえるものは、通常のふるさと納税の確定申告に医療費側の書類が加わるだけです。

  • 寄附金受領証明書、または特定事業者が発行する寄附金控除に関する証明書
  • 医療費控除の明細書(作成コーナーで入力すれば自動作成されます)
  • 医療費のお知らせ(健康保険組合等から届くもの・あれば入力が楽になります)
  • 源泉徴収票(提出は不要ですが、入力に使います)
  • マイナンバーが確認できる書類と、還付金の受取口座

医療費の領収書は提出しません。ただし自宅で5年間保管する義務があります。税務署から確認を求められることがあるためで、捨ててしまわないよう封筒にまとめておきましょう。書類の詳細は確定申告に必要な書類で一覧にしています。

医療費が多い年の寄付額の決めかた

実務的な話をします。医療費控除を使う年は、限度額の見積もりに不確実さが残ります。12月末まで医療費の総額が確定しないからです。

僕がやっているのは、寄付を年内で二段構えにする方法です。夏から秋にかけては、限度額の見込みのうち7〜8割程度までしか寄付しません。12月に入って医療費が確定し、そこから医療費控除額を織り込んで限度額を再計算し、残った枠で年末に追加の寄付をします。手術や出産、歯の治療など大きな支出が予定されている年ほど、この進め方が効きます。

もうひとつ、限度額の見込みそのものを少し保守的に置くのも有効です。限度額を数千円下回っても、失うのは寄付できたはずの枠の分だけですが、超過すると超えた金額はそのまま自己負担になります。上振れより下振れのほうが損失は小さいので、迷ったら控えめに設定してください。

ふるさと納税の申し込み自体は12月31日まで受け付けているポータルが大半ですが、決済方法によっては年内扱いの締切が早まります。年末の駆け込みは在庫切れも起きやすいので、12月中旬までに動くつもりでいるとちょうどよいです。

まとめ|併用はできる 限度額を先に見直す

要点を3つに絞ります。医療費控除とふるさと納税は同じ年に両方申告できること。医療費控除で課税所得が減るぶん、ふるさと納税の限度額は医療費控除額の2.5〜4%程度下がること。そして医療費控除で確定申告をする以上、ワンストップ特例は無効になるので、寄付分も確定申告書に必ず書くこと。

下がり幅そのものは数千円規模で、併用を避ける理由にはなりません。やるべきことは、医療費控除を織り込んだ限度額を計算し直してから寄付額を決める、それだけです。

この記事の内容は2026年8月時点の制度にもとづいています。控除額や限度額は個人の収入・家族構成・他の控除によって変わるため、具体的な金額は国税庁の確定申告書等作成コーナーや、お住まいの自治体の窓口で確認してください。

医療費控除とふるさと納税、どちらが得ですか?

比べる対象ではありません。医療費控除は追加の支出なしに税負担が軽くなる制度なので、条件を満たすなら使ったほうが手取りは増えます。ふるさと納税は先に寄付という支出があり、限度額の範囲内であれば実質2,000円の負担で返礼品を受け取れる仕組みです。両方を同じ年に申告し、医療費控除を先に見込んでから寄付額を決めるのが順番です。

医療費控除を使うと、ふるさと納税はいくら減りますか?

目安は医療費控除額の2.5〜4%程度で、所得税率が高い人ほど割合は大きくなります。医療費控除額が20万円なら、限度額の目減りは5,000〜7,000円程度が一つの目安です。ただし他の控除の状況で変わるため、実際の金額は医療費控除の欄があるシミュレーターで確認してください。

ワンストップ特例をすでに申請しました。医療費控除はもう使えませんか?

使えます。確定申告をするとワンストップ特例が無効になるだけで、医療費控除が制限されるわけではありません。ふるさと納税の寄付先をすべて確定申告書の寄附金控除に記載すれば、両方とも適用されます。自治体への取り下げ連絡は不要です。

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