転職した年のふるさと納税|収入が変わる年の限度額の考え方

源泉徴収票2枚と電卓を並べた年収計算のイメージ

結論から言うと、転職した年でもふるさと納税はできます。ただし限度額の読み方だけは、ずっと同じ会社に勤めている年とは別物になります。会社が変わったこと自体は関係なく、その年に受け取った給与の合計で決まるからです。この記事では、前職と現職を合わせて考える理由、収入が読みにくくなる3つのパターン、源泉徴収票が2枚になったときの扱い、そしてワンストップ特例が使えるかどうかまでを順番に整理します。

目次

転職した年でもふるさと納税はできる

ふるさと納税ができるかどうかの分かれ目は、勤務先でも雇用形態でもありません。その年の所得に対して所得税・住民税を納めているかどうか、この一点です。転職しても給与を受け取っていれば納税者であることに変わりはないので、寄付そのものは何の制限もなくできます。年の途中で転職した人が寄付を断られる、といったルールは存在しません。

では何が変わるのか。変わるのは「いくらまで寄付すると自己負担2,000円で済むか」という上限額、つまり限度額の見積もりやすさです。同じ会社に1年いれば、去年の源泉徴収票をそのまま当てはめてだいたいの見当がつきます。転職した年はその手が使えません。転職年でつまずくのは制度ではなく、自分の年収がいくらになるかの見積もりです。ここさえ押さえれば、あとはいつもどおりの手順で終わります。

限度額はその年の収入の合計で決まる

ふるさと納税の限度額は、寄付をした年の1月1日から12月31日までの所得をもとに計算されます。転職した年であれば、前職で受け取った給与と、現職で受け取る給与を合計した金額が基準です。3月まで前職、5月から現職という年なら、前職の1〜3月分の給与・賞与と、現職の5〜12月分の給与・賞与を足したものがその年の収入になります。

ここを「今の会社の年収」だけで考えてしまうと、限度額を実際より小さく見積もることになります。逆に、現職の月給を12倍した想定年収で計算すると、今度は大きく見積もりすぎます。どちらもズレの方向が違うだけで、正しくありません。

転職年の限度額は「前職の給与+現職の給与」の合計で決まります。会社ごとに分けて考えません。

なお、限度額のもとになるのは寄付をする年の収入であって、前年の収入ではありません。この「いつの年収か」を取り違えると計算全体がずれるので、あいまいな方はふるさと納税の限度額はいつの年収で決まるのかを先に読んでおくと迷いません。

参考までに、総務省が公開している「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」から、独身または共働き(配偶者控除の対象となる配偶者がいない)の場合の数字を並べます。あくまで社会保険料控除以外に大きな控除がない前提の目安で、家族構成や他の控除があれば変わります。

その年の給与収入の合計全額控除される寄付額の目安
300万円約28,000円
350万円約34,000円
400万円約42,000円
500万円約61,000円
600万円約77,000円

表を見ると分かるとおり、収入が50万円動けば限度額は数千円から1万円以上動きます。転職年に見積もりが甘いと、この幅がそのまま自己負担の増加につながります。

転職の空白期間に印を付けた年間カレンダー

収入が読みにくくなるパターン

転職年の年収がぶれる原因は、だいたい次の3つに集約されます。自分がどれに当てはまるかを先に確かめておくと、見積もりの精度が一段上がります。

空白期間があった場合

退職から入社までに数か月あいた場合、その期間は給与がありません。ここで注意したいのが、雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)は非課税で、所得に含まれないという点です。生活の実感としては収入があったように感じても、ふるさと納税の限度額の計算には1円も乗りません。同じく、健康保険の傷病手当金や出産手当金も非課税です。

つまり空白期間が長いほど、その年の課税される収入は前年より確実に減ります。前年と同じ感覚で寄付すると、自己負担が2,000円で収まらなくなる典型がこのケースです。僕なら、空白が3か月以上あった年は前年ベースの限度額から素直に引き算して考えます。

年の途中で収入が上がった場合

年収アップの転職は嬉しいのですが、限度額の計算では逆にやっかいです。たとえば現職の月給が前職より5万円上がったとして、その水準で受け取るのは入社月から12月までの数か月分だけ。それなのに新しい月給を12倍して年収を出すと、実際よりずっと大きな数字になります。

正しくは、前職で実際に受け取った分と、現職で年内に受け取る分を足し合わせます。「今年の年収は上がった」ではなく「今年の年収は前職分+現職の残り数か月分」と考えるだけで、ズレはかなり小さくなります。

賞与の有無で変わる

転職年の年収を最も大きく揺らすのが賞与です。前職を賞与支給前に辞めていれば、その分がまるごと消えます。現職でも、支給対象期間に在籍していなければ入社後最初の賞与は出ないか、寸志程度に減額されるのが一般的です。

賞与が2回分そっくりなくなれば、年収は数十万円単位で下がります。転職年の年収が想定より低くなるのは、たいていこれが理由です。正直、僕もここは見落としやすいところだと思っていて、寄付額を決める前に現職の賞与規程(支給対象期間と在籍要件)を一度確認しておく価値があります。

逆に、退職時に前職から未消化分の手当や退職金が出ることもあります。退職金は給与とは別枠の「退職所得」として分離課税されるため、原則としてふるさと納税の限度額には影響しません。この点は退職した年のふるさと納税で詳しく整理しています。

クリップで留めた前職の源泉徴収票

源泉徴収票が2枚になる場合

年の途中で転職すると、前職と現職からそれぞれ源泉徴収票が発行されます。ここでやることは1つだけ。前職の源泉徴収票を現職に提出することです。提出すれば、現職が前職分の給与を合算して年末調整を行い、最終的に1枚にまとまった源泉徴収票が12月〜翌1月に交付されます。この合計額が、そのままふるさと納税の限度額のもとになる数字です。

提出しないとどうなるか。現職は前職分を含めた年末調整ができないため、自分で確定申告して精算することになります。国税庁も、中途就職者については前職分を含めて年末調整を行う取り扱いを示しています。

【源泉徴収票まわりで確認しておくこと】

前職の源泉徴収票は、退職後1か月以内に交付されるのが原則です。届かない場合は前職の担当部署に請求します。

年末調整の書類提出期限(11月中が多い)に間に合わないと、前職分は自分で確定申告することになります。

前職と現職の給与の合計が2,000万円を超えると、そもそも年末調整の対象外となり確定申告が必要です。

源泉徴収票のどこを見れば限度額の計算に使えるのかは、源泉徴収票から限度額を計算する方法にまとめてあります。「支払金額」と「社会保険料等の金額」の2か所が分かれば、シミュレーターの精度はぐっと上がります。

手続きはワンストップでよいか

転職年で迷いやすいのがここです。判断はシンプルで、確定申告をするかどうかで決まります。

転職年の状況ふるさと納税の手続き
前職の源泉徴収票を提出し、現職で年末調整が完了したワンストップ特例が使える(寄付先5自治体以内が条件)
前職分が年末調整に間に合わなかった確定申告。寄付分も申告書に記載する
年内に再就職せず、年末時点で無職だった確定申告。源泉徴収された所得税の精算も同時に行う
医療費控除や住宅ローン控除1年目がある確定申告。ワンストップは無効になる

見落としやすいのが2段目以降です。ワンストップ特例の申請書を提出済みでも、あとから確定申告をするとワンストップの申請はすべて無効になります。無効になった状態で寄付分を申告書に書き忘れると、控除がまるごと受けられません。転職年は確定申告に回る可能性が普通の年より高いので、ここだけは意識しておきましょう。

ワンストップ特例を使う場合、申請書は寄付した翌年の1月10日必着です。年末に駆け込みで寄付すると書類が間に合わないことがあるため、オンライン申請に対応している自治体ならそちらのほうが確実です(対応状況や締切時刻はポータルによって異なります)。確定申告になる場合の進め方はふるさと納税の確定申告ガイドで手順を追って説明しています。

見込みが立たないときは年末まで待つ

転職年の年収は、賞与が確定するまで正確には読めません。であれば、無理に春や夏の時点で満額を寄付する必要はないと考えています。寄付は12月31日の決済完了までに間に合えばその年の分として扱われるので、11月〜12月に入ってから動いても遅くありません。

12月に入れば、現職の給与明細の累計支給額と前職の源泉徴収票を足すことで、その年の給与収入はほぼ確定します。この数字を公式のシミュレーターに入れれば、精度の高い目安が出ます。数字の入れ方に自信がない方はシミュレーターの使い方を参照してください。

ただし年末まで待つことにはコストもあります。

年末まで待つ
早めに寄付する
  • 年収がほぼ確定してから金額を決められる
  • 限度額を超える失敗が起きにくい
  • 人気の返礼品を選べる
  • ワンストップ申請書を余裕をもって出せる
  • 配送や決済の混雑を避けられる

僕が転職した年に取った方法は折衷案でした。夏までに、どう転んでも確実に届く金額(安全に見積もった限度額の半分程度)を先に寄付し、残りを12月に金額が固まってから追加する。こうすると返礼品の選択肢も残りますし、上限を踏み外すリスクも抑えられます。迷ったら「少なめに寄付して、あとから足す」が転職年の基本方針です。

逆に、転職年でも寄付を見送ったほうがよいケースがあります。空白期間が長く、その年の収入がごくわずかだった場合です。住民税の所得割がかからない水準まで収入が下がっていれば、控除される元の税金がないため、寄付は単なる自治体への贈り物になります。返礼品目当てで少額だけ試すのは自由ですが、「節税になる」という理解では損をします。

まとめ|前職と現職を合わせた収入で考える

転職した年のふるさと納税は、次の3点を押さえれば迷いません。

1つ目は、限度額は会社単位ではなく、その年の1月1日から12月31日までに受け取った給与の合計で決まること。2つ目は、空白期間・賞与の有無・年収アップのタイミングによって、体感より年収がぶれること。特に賞与の欠落は影響が大きく、想定より年収が下がりやすい方向に働きます。3つ目は、前職の源泉徴収票を現職に提出できたかどうかで、ワンストップと確定申告のどちらになるかが決まること。

やることの順番としては、まず前職の源泉徴収票を現職に提出する。12月に給与の累計が見えたらシミュレーターで目安を出す。その範囲で寄付し、5自治体以内かつ確定申告が不要ならワンストップ、そうでなければ確定申告で寄付分を申告する。この一本道です。

なお、控除の効果は寄付した年の所得税還付と、翌年6月からの住民税減額という形で現れます。転職直後は住民税の納め方(給与天引きか自分で納付か)も切り替わっていることが多いので、翌年6月の住民税決定通知書で控除額が反映されているかを確認しておくと安心して次の年に進めます。

前職の源泉徴収票がまだ手元にありません。寄付はできますか?

寄付そのものはいつでもできます。ただし限度額の計算に前職分が必要なので、金額を確定させるのは源泉徴収票が届いてからにしましょう。退職後1か月以内に交付されるのが原則で、届かない場合は前職に請求できます。

年内に転職せず、年末時点で無職の場合はどうなりますか?

その年に給与収入があれば寄付はできますが、年末調整を受けていないため確定申告で精算することになります。ワンストップ特例は使えないので、寄付金受領証明書を保管して申告書に記載してください。収入がごく少ない年は、控除される税金自体がないこともあります。

ワンストップ特例の申請書を出したあとに確定申告が必要だと分かりました。どうすればよいですか?

確定申告をすると、提出済みのワンストップ申請はすべて無効になります。寄付した全件を確定申告書の寄附金控除欄に記載すれば問題ありません。自治体への取り下げ連絡は不要です。

この記事の税制の説明は、総務省「ふるさと納税ポータルサイト」および国税庁の公表内容(2026年8月時点)にもとづいています。制度の細かな取り扱いや自分の限度額については、総務省のポータルサイトと各自治体・ポータルの公式シミュレーターで確認してください。

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